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【報告】九州北部豪雨災害復興支援2019年前期活動報告

 

 

・「九州北部豪雨災害復興支援団体紹介小冊子“かたり”」制作

・「黒川復興ガーデンとバイオアート − 英彦山修験道と禅に習う  − 」 九州北部豪雨災害復興支援 風と水と土の道・再生のための庭づくりワークショップvol.1

 

  近年、日本全国で豪雨や台風などの大規模自然災害が頻発し、災害による深刻な影響が持続する傾向にあります。今まで住んでいた家に住めなくなる人。今までやっていた仕事ができなくなる人。住む人が一気に少なくなる地域。それらによる精神的・経済的なダメージ、コミュニティの分断は非常に大きなものです。

 このような状況をふまえ、被災地の復興支援に、アートの力はどのように寄与できるのか?

 九州大学ソーシャルアートラボでは、2018年度から九州北部豪雨災害復興支援プロジェクト「黒川復興ガーデンとバイオアート − 英彦山修験道と禅に習う −」を展開しています。

 この活動は、2017年に発生した九州北部豪雨で被災された方々や環境に寄り添い、復興に寄与することを目指し、朝倉市黒川にある「共星の里(廃校利用の美術館)」の野外スペースに復興ガーデンを制作するプロジェクトです。一般公募による参加者と共に「復興の庭」を企画、デザイン、実働しながら共創する実践講座の形をとっています。特に「復興ガーデンを創造するプロセスを通して参加者が感じ学んだことを、いかに主体的な行動に結びつけていくか」という人材育成の側面を重要視しています。

 

2018年度の活動の様子は、こちらから御覧いただけます。

2018年7月1日

動画

2018年10月26日と11月10日

ウェブ報告書

動画

 2019年度は、2017年7月の豪雨発生から2年目となる年です。

 大規模な自然災害が発生した場合、その直後の「復旧期」には、全国から多数のボランティアの方々が現地入りし、家屋の泥出しなどの復旧作業に尽力されます。やがて、復旧作業がある程度進んだ後は、メディアで報道される機会も激減します。

 しかし、現地で暮らしている当事者の方々は、そこからの長い「復興期」を生きてゆかねばならないのです。そのような被災地において、災害発生から復興支援活動をたゆまず継続している人物や団体は、どのような思いを持って、どのような活動をしているのでしょうか。

 その軌跡を冊子にまとめようと、大学生や社会人の有志16人で「編集部」を結成しました。4月〜6月に何度も現地へ足を運び、21団体27名のインタビュー調査を行い、7月〜9月で編集・校正を重ね、9月末、「九州北部豪雨災害復興支援団体紹介小冊子“かたり”」が完成しました。

 

下記URLからダウンロードできます。

http://www.sal.design.kyushu-u.ac.jp/pdf/2019katari.pdf

“かたり” デザイン:田中里佳

 この冊子を見た一般社団法人福岡青年会議所の皆さんが「自分たちも災害が発生した際に迅速に動けるよう、平時からシミュレーションを行おう」と自主的に企画を立ち上げるという動きが早速ありました。このように、被災地の内外を結ぶネットワーク作りに貢献できたことは、大変うれしいことです。

 「黒川復興ガーデンとバイオアート − 英彦山修験道と禅に習う  − 」

 九州北部豪雨災害復興支援 風と水と土の道・再生のための庭づくりワークショップvol.1

写真:長野聡史

ドローン写真撮影:藤木秀一

 2019年9月11日(水)、12日(木)、朝倉市黒川にある共星の里にて、庭づくりワークショップを開催しました。一般公募に応募いただいた大学生・社会人などの参加者が両日、19名。それに加え、地域内外からボランティアで来られていた方々も居られました。この度は特に、「苗木を植える」というのがメインの一つでした。庭づくりにおいて「植栽をどのようにするか」は、大きな要素です。今回、植栽については予め、九州大学芸術工学部の学生4名が考案・計画しました。日本庭園における植栽の基礎を学び、7月から現地に足を運び、様々な樹種について調べ、植樹した後の四季の想像図をCGで作り、低木・高木、落葉樹・常緑樹、実や葉の色による色彩バランスなどを細かく考えてくれました。そのアイディアをもとに、ヤマザクラ、イロハモミジ、ヤブツバキ、ハクウンボクなど17種類の苗木が用意されました。

庭づくりワークショップ当日の二日間は好天に恵まれましたが、9月とは思えない強烈な陽射しと暑さの中での活動となりました。

共星の里アートディレクターの柳和暢さんから、「豪雨で校庭に流れ着いた岩を見て、この岩を生かして庭園づくりをできないかなと考えた」と思い立った経緯を話して頂きました。

そして実働の作業は、参加メンバーたちが、いくつかの持ち場に分かれて実施。それぞれの得意分野を活かしつつ、適材適所での分業です。土壌改良のための作業は、石彫家の坂本浩人さん、大工の脇大志さんの協力のもと進められました。復興ボランティアとして経験の豊富な泉田寿裕さんには、重機を操作して岩を移動する作業や、掘った側溝の上を車両が通れるよう強度のある橋を造る作業で、非常に尽力いただきました。この橋造りには、校庭の隅に積まれていた被災家屋の廃材を再利用しました。「悲しいモノ」の象徴であった被災廃材が、「ここに来る人を渡すための橋」に変わる。その工程は、単なる「作業」に留まらない深い意味があるように感じられました。また、校庭のフェンス周りのツタや伸びた樹の枝の剪定が進むと、気持ちの良い風と光が通り、汗を流して頑張った皆さんも感動していました。

 ワークショップ2日目にいよいよ、植樹の作業。参加者がそれぞれ好きな苗木を選び、どこに植えるかを考えました。

田主丸グリーンセンターの田中一成さんに指導を頂きながら、植樹が進んでいきました。何ヶ月も掛けて植栽の計画をしてきた学生たちは「今まで頭の中で考えてきたことが、ついに実現して嬉しい」と喜びを語っていました。地元で「高木薪づくりプロジェクト」をされている師岡知弘さんの協力で、木材チップ作りも行われました。こうした作業の合間に、近隣の住民の方々が、地元で採れた美味しい果物や手作りのジュースなどを差し入れして下さいました。参加者の皆さんも、暑くて疲れる作業の中、とても喜んでいました。このような交流が生まれたことも、嬉しく思います。野外での作業を一段落した後、皆さんで共星の里の講堂に集まり、心に残った風景の写真をそれぞれ見せながら発表する振り返りを行いました。参加者たちから「苗木に手を触れながら植えていると、愛着が湧く。ふと気づいたら、苗木に声をかけていた」「自分の植えた木の成長を見るために、またここへ来たくなる。今回参加した私らだけでなく、いろいろな人がここに来るきっかけにもなってほしい」

といった声が聞かれました。共星の里ゼネラルマネージャーの尾藤悦子さんも「自然に囲まれた学校で感性を磨かれた。この環境が五感の感性を育ててくれる」と語られました。

芸術(アート)の「藝」という漢字は、もともと「木を植える」という意味だった、と言われます。被災地で庭園づくりというアート活動を行うことが、どんな意味を持ち、どのような影響を地域内外に及ぼしていくのか。今後の展開にも、ぜひご注目ください。庭づくりワークショップ vol. 2 は、2020年3月5日、6日に開催いたします。流木による東屋づくりや、玉砂利敷き、草花の植栽などを行う予定です。

(文責:白水 祐樹)

 

九州大学大学院芸術工学研究院 ソーシャルアートラボ事務局

815-8540 福岡市南区塩原4-9-1

092-553-4552

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