海と神話をつなぐ志賀島プロジェクト 2018・志賀島自由大学 《第 III 期》

冬至にうたう「阿知女作法」

〜ISOLA2018〜

 

◾演目

神楽歌「阿知女作法」

楽歌「千歳法」

「植物文様琴歌集〜藻塩、月読」

「植物文様ハープ曲集」

「笙・笛・琴・声」奏上 ほか

 

◾出演

石川高(歌/笙)

中村理恵(竪琴)

山中すなお(声)

渡辺融(土笛)

磯部久子、比屋根綾子(シンギング・ボール)

 

◾公演概要

日時:2018年12月22日(土)17:00

(16:30開場)

会場:九州大学大橋キャンパス多次元デザイン実験棟ホール

定員:100名(予約制・要事前予約)

入場料:無料

 

◾スタッフ
芸術監督・作曲・音響展示:藤枝守

演出協力:石川高

美術:知足美加子

音響:須藤力(モルグ社)

音響システム:九州大学尾本研究室

映像制作:渡辺圭介(anno lab)

映像システム:九州大学石井研究室

舞台イメージ:藤匠汰郎

広報:池田美奈子

舞台構成・舞台監督・運営協力:株式会社アルカディア

制作:九州大学ソーシャルアートラボ

冬至にうたう「阿知女作法」〜ISOLA2018〜

 

 宮中の『御神楽』のなかで唱えられる《阿知女作法》。「アチメ、オウ オウ」と呪文のように繰り返されるこの神楽歌は、海のなかにいる阿度部磯良(あどめのいそら)という神を呼び出すために唱えられたと言われています。その磯良を呼び出す舞台となったのが志賀島の突端の勝馬。そして、磯良を呼び出すために、この地で七日七晩にわたって歌や踊りが続き、それが神楽の発祥だったとの説もあります。

 今年8月から始まった「海と神話をつなぐ〜志賀島プロジェクト2018」。その最後を「冬至にうたう阿知女作法〜ISOLA2018〜」と題するシアター作品で締めくくります。公演日となる12月22日は、冬至にあたり、古代では、この日を1年の始まりとして、あるいは、生と死との境目として、特別な意味づけを与えていました。

 志賀島・勝馬の沖津宮を起点として、冬至に昇ってくる日の出の方向にラインを延ばしてみると、ほぼ、その線上に箱崎宮や宇美八幡宮、竈門(かまど)神社など、いくつかの神社が並びます。まさに、冬至の日の出のなかに神々がつながるのです。

 9月8日に志賀海神社にて「長月にうたう阿知女作法」という奉納演奏が執り行われました。その奉納演奏に引き続いて、本公演では、12月22日の冬至の日に多次元ホールにて、ふたたび「阿知女作法」を唱えることになりました。唱えるにあたり、多次元を志賀島に見立てる手立てが施されています。まず、葉脈のように絡み合う志賀島の等高線の地図がフロアに映し出され、そのうえに沖津宮近くの潮が干満する磯辺の映像が重ねられます。つまり、この舞台での演目は、潮の干満のプロセスのなかで展開するのです。

 神功皇后の伝説では、龍宮にて干珠満珠の二つの珠を磯良は受け取り、皇后に渡したとあります。この霊力のある二つの珠は、干満という海の秩序の象徴とも考えられ、また、潮についての古代の海人(あま)の知恵とみなすことができるでしょう。

 冬至のラインが塩によってくっきりと描かれ、地図上の砂嘴(海の中道)を「橋懸かり」に見立てた多次元ホールの舞台は、志賀島そのものに変換します。まさに、志賀島という仮想の舞台のうえで、潮の干満が響き合い、「阿知女作法」や「千歳法」という志賀島にゆかりの神楽歌が唱えられ、さらに「月読」や「藻塩」などの「植物文様琴歌集」が織り込まれていきます。

 イタリア語で「島」を意味する「ISOLA」は、また、身体を海水に浮べたような感覚をもたらす「isolation tank」を想起させます。おそらく、海中のISOLAは、変性意識のなかにあったのかもしれません。そして、海から呼び出されたときに、海藻などが付着した顔を隠すために白布でおおったといわれています。その顔の表情は、まさに、潮が引いたときの磯そのものであり、ISOLAが海の精霊の化身であることを物語っています。

                                                                                                             藤枝 守

公演報告

宮中に伝わる御神楽のうち、「阿知女作法」と「千歳」は志賀島を舞台とした作品だと伝えられています。この公演では、この神楽歌2曲にくわえ、作曲家の藤枝守による新作も交え、志賀島が辿ってきた深遠な歴史を感じさせる新たな世界観の描出をおこなうことにより、参加者が五感で海のリアリティを感じる機会を設けました。

会場となった九州大学大橋キャンパス多次元デザイン実験棟ホールのフロアには、葉脈のように絡み合う志賀島の等高線の地図が映し出されました。そこに志賀島の海の潮の干満の光景(実写)が重ねられ、舞台が仮想の志賀島に変幻してゆきます。時間の経過とともに磯が現れては海水に隠れていく様子がアーティスティックに再現されました。

舞台エリアおよび客席を囲むように置かれた6台のスピーカーからは沖津宮付近で録音された波音が絶えず流れ、潮の干満がホール全体に共鳴。舞台には、竪琴、石笛、笙の奏者と歌い手が登場し、「阿知女作法」や「千歳法」、「月読」や「藻塩」などを演奏しました。

鑑賞者のことば

  • 海、波の音が大変美しかったです。声、ハープ、笙、すばらしかったです。
  • 精神の鎮静のひとときでした。日本人古来の文字以前の響き、波の音、映像とても美しかったです。
  • とても荘厳な時空間でした。いのちの息吹と宇宙のつながりを感じました。あらためて、海(アマ)=天(アマ)、母なる海を感じました。
  • 神楽と芸術が合わさった、神聖で静かな時間でした。
  • 阿知女作法のワークショップに参加して、実際に声を出した経験が今日につながりました。時代をはるかこえて志賀島と海を想う印象深いプロジェクトでした。
  • 神秘的な音で何か不思議な世界を見たような気分でした。海の底に引き込まれるようにすばらしい演者の方々でした。
  • 意味のある日に行われる空間全体での演出に興味があり参加しました。言葉では上手く感じたことを表現できませんが、“無”になれる時間でした。

写真:富永 亜紀子

九州大学大学院芸術工学研究院 ソーシャルアートラボ事務局

815-8540 福岡市南区塩原4-9-1

092-553-4552

Copyright (C) 2017 Social Art Lab. All Rights Reserved.

九州大学大学院芸術工学研究院 ソーシャルアートラボ事務局

815-8540 福岡市南区塩原4-9-1

092-553-4552

Copyright (C) 2017 Social Art Lab. All Rights Reserved.